舞台後方にすだれ状の長いカーテン。上手にキーボード、下手にアコースティックギター。センター前方に背の高い1脚の椅子。
開場BGMは最後の曲になり音量が大きくなる。曲が終わり荒幡さんと山口さんが向かい合って座る。そして、ReoNaの登場である。
今回のツアーはアコースティックライブだ。ゆったりと座って、あとは上質な音に包まれるだけ。荒幡さんが鍵盤を1音1音丁寧に弾き始める。しかし、すぐにその様相は変化し、私ののんびりとした心づもりは裏切られる。荒幡さんが暴れ出す。中腰になり頭を振って鍵盤を叩き始めた。
アコースティックであってもReoNaのライブは切実なのである。絶望を歌った曲、絶望に寄り添った曲、絶望を癒やす曲が代わるがわる心臓を揺さぶる。ファンクラブイベントなだけあって、普段のライブで披露されない曲も多かった。『Lotus』が曲紹介されたときには天を仰ぐオタクになってしまった。
聞こえるのはReoNaの歌声とキーボードとアコースティックギターの音だけ。ReoNaが情感たっぷりに歌い、荒幡さんがReoNaの息遣いをじっと見つめ、山口さんが2人の音に耳を傾け息を合わせる。観客はドリンクを飲む音や衣擦れ音を立てることもためらわれるような緊迫した空間が広がる。その空間を照明が彩る。照明は相変わらず素晴らしく鳥肌が立つほどだ。激しくはないがカラフルで自己主張が強い。
【#ふあんぷらぐど2023 大阪公演】
— ReoNaStaff (@ReoNaStaff) November 10, 2023
本日11/10(金)開催「#ReoNa Acoustic Live Tour “#ふあんぷらぐど2023 ”」大阪公演が終演しました!
ご来場くださった皆さま、ありがとうございました!#ReoNa5th pic.twitter.com/txsa0DR35X
カバー曲も数曲あった。さだまさしのカバーは意外で、印象的だった。調べると昭和56年の曲らしい。いつの時代も人間は絶望する生き物なのである。
そんな中、つかの間の平穏が訪れる。バンド紹介を兼ねたMCの時間だ。サウジアラビアの猫は足が長い、もとい足が細いという話題に。決して日本の猫の足が短いわけではない。
猫の話題からシームレスに『猫失格』が始まる。毎度のことながらバンド紹介からの流れはオシャレで心が躍ってしまう。
『猫失格』では、ReoNa家の猫ちゃんたちの写真が次々にスクリーンに映し出された。とにかくちくわ・さしみ・わさび、ちくわ・さしみ・わさび、ちくわ・さしみ・わさびなのである。幸せ空間であった。
ほのぼのとした曲が続き、『ANIMA』や『シャル・ウィ・ダンス?』などの盛り上がる曲で締めて大団円となるのだろうと油断していた。また裏切られた。ツアー初解禁の新曲『オムライス』が披露された。『生きてるだけでえらいよ』を彷彿とさせる語りかけるような口語調の歌詞で、現実感があって心が苦しくなって泣いてしまった。おそらく傘村トータさん作詞ではないだろうか?リリースが待ち遠しい。
最後は『HUMAN』と『SWEET HURT』で優しく締めてくれた。おかげでなんとか私のメンタルは回復して会場をあとにすることができた。
今回、荒幡さんが全曲アコースティックアレンジをしたのだと思われるが、オリジナルの匂いを残しつつ、しっとりと聞かせる曲、アコースティックながらも激しい曲と強弱がしっかりしていた。さすがであった。荒幡さん大好きです。
そんなライブを荒幡さんの椅子の軋む音や山口さんの譜面をめくる音が聞こえるような近距離で味わうことができた。
来年にはアコースティックでない通常のホールツアーが控えている。今回披露されなかったアッパーな曲も歌われるはずなので、体全体で楽しみたい。二村さんにも会いたい。
山口さんが提案した富士山頂ライブが開催されることにも期待しよう。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
じゃあな!